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もしもしかめよ

研究・ドラッグデリバリーシステム・BUMP OF CHICKENをテーマに情報を発信していくブログ

ドラッグデリバリーシステム(DDS)って?

ドラッグデリバリーシステム

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ドラッグデリバリーシステム = 薬を量的・時空間的に制御

私たちは病気になってしまったとき、体を休めたり、薬を飲んだりして病気を治そうとしますよね。

病気を治すのに役にたつ「薬」ですが、一言で薬といっても、上の画像のようにカプセル状だったり、錠剤だったり、液体飲み薬だったりはたまた病院で注射することがあります。あまり意識することはないかもしれませんが、実際は治したい病気に応じて、薬の種類が変わり、その形(剤形)にもたくさんの種類があります。

では何故、そのように薬によって剤形が変わってくるのでしょうか?

その理由はざっくりいうと、

  1. 薬によって水に溶けやすい・溶けにくいといった物理化学的な性質が異なり、
  2. 異常をきたしている部位は病気によって様々であり、
  3. 疾患部位で薬が効くためには量や時間を制御する必要がある

からに他なりません。

性質に応じた剤形設計

現在使われている薬は、機能を果たすのは多くの場合がとても小さな化合物(低分子)です。しかしその種類によって、水に溶けやすい・溶けにくいや、電気的にプラスを帯びている・マイナスを帯びている、と言った物理化学的性質が異なります。

また、体の中も部位によって性質が異なります。例えば血液は水が多く含まれるのはみなさんご存知ですよね。薬は多くの場合血流に乗って患部に届くことになりますが、水に溶けにくい薬は血液中に溶けることができず、そのままでは薬を届けたい場所まで届けさせることができません。そこで、一旦水に溶けやすい他の物質などで薬を包むなどして、血流に乗って薬を患部に届けるといった工夫が必要になるのです。

 

疾患部位のみに薬を届かせる

例えば肺炎になった場合、異常をきたしているのはもちろん肺であり、肺炎を治すにはそのための薬を肺に送り届け細菌やウイルスを攻撃する必要があります。せっかくの肺炎用の薬なのに、胃に届いてしまったり、どこにもいかず排泄されてしまっては意味がありませんよね。

また、例えば大腸がんになってしまったときには抗がん剤を大腸の腫瘍部位まで届ける必要があります。特に抗がん剤は、手強いがん細胞をやっつける必要があるために、かなり毒性の強いものになります。もしその薬が他の正常な細胞に届いてしまうと、正常な細胞をダメにしてしまい、副作用の元になってしまいます。そう考えると、必要な薬を標的とする部位のみに届けることが重要だというのがわかります。

このように、届かせたいところにのみ薬を届かせることは大事なことですが、低分子のままではそれはほとんど不可能です。それを可能にするために、剤形を工夫することによって必要なところにだけ薬を届けるのです。

 

量・時間の制御も不可欠

3.のように、届けるだけでなくその量も重要になってきます。患部に届く薬の量が少なすぎては病気を治すことはできませんし、多すぎては逆に悪影響を及ぼしてしまう可能性があります。また、効果が長時間続くことが大事な場合だってあります。低分子のみでは、ほとんど患部に届く前に尿として排泄されてしまうので、剤形をうまく設計することでそういったことも制御する必要があります。

 

以上のように、薬の物理化学的な性質に着目して、薬を届けたい場所に、届けたい量・必要な時間だけ届けるために剤形を制御することドラッグデリバリーシステム(Drug Delivery System, DDS)といいます。市販の風邪薬だったり鎮痛剤だったりといった薬は、このようなドラッグデリバリーシステムがほぼ確立されていて、それにしたがって薬が作られています。そのおかげで私たちは、薬を飲むことで病気を治すことができるんですね。

まだまだ課題は残されている

ほとんどは確立されているとはいっても、まだまだたくさんの課題が残されています。代表的な薬としては抗がん剤があります。未だ抗がん剤に対してドラッグデリバリーシステムが確立されていないが故に、抗がん剤投与によって副作用に苦しむがん患者さんが今でもたくさんいます。芸能人の方々が抗がん剤治療で髪の毛が抜けてしまっているのをテレビで見たことがある人も多いのではないでしょうか。

そういった現状を改善すべく、現在世界中で抗がん剤についてのDDS研究が行われています。日本はDDS研究がとても強く、先日記事にしたがんに対するDDSで重要なEPR効果を発見した前田氏・松村氏は日本人ですし、ミセル製剤研究のパイオニアである片岡氏も日本人です。次回以降は、この抗がん剤DDSについて詳しく説明していこうと思います。

 

まとめ

今回は、僕の研究分野であるDDSの概念について説明しました。

DDSとは、物理化学的な性質に着目して、薬を量的・時間空間的に制御することをいいます。多くの低分子薬については方法論が確立されつつありますが、抗がん剤についてはまだ未完成で、今まさに世界中で研究が行われている、ということを知っていただきたいなと思います。

次回は抗がん剤についてのDDSについてより詳細に説明しようと思います。

読んでいただきありがとうございました。

 

けまり

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